作品紹介
今回、ご紹介するのは外山 滋比古 著の『思考の整理学(ちくま文庫)』です。
1986年に刊行されて30年以上が経過しました。
それにも関わらず、毎年コンスタントに出題される作品です。
頻出の論説文とも言えるでしょう。
- なぜ、毎年のように出題されるのか?
2019年も、鎌倉学園中学校で出題されました。
- どのような問題を出題したのか?
上記2点に絞って、調査と考察をしてみました。
記事末には、過去に出題した学校も併せて記載しておきましたので、ご参考ください。
なぜ、毎年のように出題されているのか?
内容が普遍的で古くならない
ロングセラーの作品となっています。
その最大要因は、内容が普遍的で古くならないから…でしょうか。
時代に左右されることのない独自の洞察が満載です。
具体的には、下記のようなコトが紹介されています。
- これからの時代で必要とされるのは、自力で飛び回れる飛行機人間である。
学校は、グライダー人間を養成している。飛行機人間になっている人が少ない。 - 思考を整理するうえで、寝かせることほど大事なコトはない。
アイデアは1日(或いは数年)寝かせるコトで、飛躍するコトがある。 - 本当にやるべきことは、1つのことだけに注力しているとなかなか見えてこない。
- 知識をいたずらに所蔵してはいけない。
- 必要なもの以外は忘れてしまうべきだ。
『やらなければいけない事』を並べ立てる一方通行な中身ではないので、実生活で思い当たる事柄に改めて気づく…すなわち再認識できるはずです。
そうは言っても、これは様々な経験があってこその理解です。
(一般的な)小学生の子供がこの本を読んだ時に、果たして理解ができるのか…?きっと、かなり難しいんだろうなぁ…と、思いながら、この本を読んでいました。
『東大、京大で一番読まれた本』
2008年に東大、京大生協の書籍販売ランキングで1位を獲得し、そこから『東大、京大で一番読まれた本』のフレーズが生まれたそうです。
このフレーズを帯で使ったところ売上が加速し、数々の記録を樹立していきます。
- 2009年には累計発行部数が100万部を突破。
- 2016年には文庫化30年目にして200万部を突破。
普遍的で古くならないから、読みやすく、売れています。
私が購入した時は、『240万部突破!』という帯になっていました。(2020年2月現在)
今後もじわじわと売り上げを伸ばし、300万部に達するのではないか?と思われます。
筆者撮影
各章が完結している
各章が、一話完結で構成されています。そのため、どこの章を切り取っても一つの論説文として出題できます。
作成する学校側も、問題を作成し易いのかなぁ…と思ってしまいました。
鎌倉学園中学校から出題された問題とは
2019年に鎌倉学園中学校から出題されました。
どのパートから出題されたのか?ご紹介します。
文字数は妥当
Ⅴ章の『ことわざの世界』のパートから丸々出題されました。約3000字です。
中学受験国語で出題される文字数は、一般的に2500〜3500文字程度と言われています。
『妥当な長さ』と言えるでしょう。
『ことわざ』が頻出
多くのことわざが出てきます。穴埋め問題にしやすいのでしょう。
実際に、ことわざを埋める問題が多数出ています。
本章で出てきたことわざを挙げておきますね。
- 夜目、遠目、笠の内
- 従僕に英雄なし
- 石の上にも三年
- ころがる石はコケ(お金)をつけない【イギリスのことわざ】
- 隣の花は赤い(美しい)
全てのことわざを把握しておく必要はありません。
出てきたことわざの後に、その言葉を説明する文章が続きます。すなわち、文章を正しく読めれば、ことわざ自体を知っておく必要はないのです。
特に、『夜目、遠目、笠の内』なんかは、ほとんどの小学生は知らないでしょう。
恥ずかしながら、私も知りませんでした。しかし、その言葉を説明する文章が後に続くのです。
解けるか?解けないか?
…その分岐点は、下記に分かれるのでしょう。
- 『ああ、わからない…』とあきらめてしまうか?
- 後に続く説明文を読んで理解しようとするか?
入試で出題した学校
以下の学校で出題されたようです。ご参考ください。
2002年 攻玉社中学校
2002年 城北埼玉中学校
2003年 西大和学園中学校
2003年 駒沢学園女子中学校
2004年 神奈川大学附属中学校
2007年 北鎌倉女子学園中学校
2008年 横浜富士見丘学園中等教育学校
2009年 麗澤中学校
2009年 春日部共栄中学校
2010年 茗溪学園中学校
2010年 青山学院中等部
2010年 栄東中学校
2011年 藤嶺学園藤沢中学校
2012年 大宮開成中学校
2012年 自修館中等教育学校
2012年 千葉日本大学第一中学校
2013年 聖園女学院中学校
2013年 浅野中学校
2017年 美濃加茂中学校
2017年 広島女学院中学校
2019年 鎌倉学園中学校 (今回 ご紹介)
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