作品紹介
中二の九月に、マレーシアからの帰国子女になった沙弥は、日本の中学に順応しようと四苦八苦。ある日、沙弥は延滞本の督促をしてまわる三年の「督促女王」に呼び出されて「今からギンコウついてきて」と言われ、まさか銀行強盗?と沙弥は驚くがそれは短歌の吟行のことだった。短歌など詠んだことのない沙弥は戸惑う。しかし、でたらめにマレーシア語を織り交ぜた短歌を詠んでみると……。
上述は、小説の紹介文です。
今回ご紹介する『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』は、2019年度中学入試の国語最多出題作のようです。
普通に読むと、明らかに女の子向けの物語。
これが、男子校の問題として出題されるのです。
恐るべし!中学受験国語!!
内容紹介
タイトルの意味
タイトルの『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』は、マレーシア語で『5・7・5・7・7』という意味です。
5・7・5・7・7と句を連ね、三十一字でつづる短歌のことを指しています。
このタイトルを見た私の第一印象は、『インドネシア語かなぁ?』でした…が、マレーシア語でした。インドネシア語は、マレー語が語源となっているのです。
話がそれちゃいましたので、元に戻しますね。
ザックリあらすじ(ネタバレ)
- 主人公の沙弥がマレーシアから帰国する。マレーシアには2年半ほど家族で滞在していた。
中学2年9月からの転入生で、帰国子女ぶってると見られないよう、英語の授業で目立たないように、緊張しながらの学校生活が始まる。 - ある日、督促女王と呼ばれる先輩から吟行の誘い。銀行と勘違いして分けもわからずついていく途中次々と挟まれる短歌。『一緒に短歌を詠もうよ』と誘われる。
- 沙弥が詠む短歌はマレーシア語が混じっていて、説明されないとわからないけどなんだか新鮮。
『無理やりに連れられてきた吟行は早く帰ろうジュンパラギ!』
※ジュンパラギは「バイバイ、又後で」という意味 - ある日、『今日も(吟行)行くよ』と沙弥のクラスに乗り込んできた先輩。
先輩と仲が良いコトをクラスメイトに知られたくない沙弥は、先輩がいなくなった後、先輩の悪口を言ってその場ををつくろう。悪口を聞いていた先輩と沙弥は仲がこじれる。 - 仲直りしたい沙弥は、先輩への思いを書いた短歌カードを手渡し、関係を修復する。
- お母さんの浮気疑惑が発覚。スポーツクラブへ行く時間が長くなり、行く前には念入りなお化粧。沙弥は、先輩と吟行ナイト(お母さんの尾行)を決行する。
- 吟行ナイト中に、先輩との会話のパート。
会話の内容は、学校外の歌会に所属したエピソード、先輩が私立中学から転向した理由、短歌の魅力…等。 - 小学校の卒業の時から気になる存在だった藤枝君。中学校で再会して同じクラスで隣の席となったが、給食の時はいつもいない。
このことは、彼の新しいお母さんがイスラム教徒のマレーシア人、それに合わせて彼もイスラム教徒になったコトと関係している。 - ある日、藤枝の机からこぼれた短歌カードを拾った沙弥は、それが先輩と2人で吟行にいっていたものでは?と動揺する。
- 結局先輩の短歌の意味を、藤枝君が誤解したのでは?と気づいた沙弥がキューピット役になる。
出題範囲について
4校(栄光、海城、成城、早稲田実業)の問題を解いてみました。
4校のうち、3校(海城、成城、早稲田実業)の出題パートが同じだったのです。
上記青色のアンダーラインの箇所です。
海城のみ文章が長く、赤色アンダーラインの部分まで含まれていました。
ちなみに、栄光は上記黄色のアンダーラインの箇所です。
3校の比較結果
まとめた結果
3校(海城、成城、早稲田実業)を比較すると、下記の様になります。
学校 | 出題パート (上記の番号) | 文字数比較 (成城を1とする) | 難易度 | 予想偏差値 |
---|---|---|---|---|
成城 | 4 | 1 | 易 | 50−54 |
海城 | 4、5 | 2 | 易 | 60−65 |
早稲田実業 | 4 | 1.5 | 難 | 64 |
私の主観ですので、国語の先生が評価するとズレがあるかもしれません。
その点はご容赦ください。
わかったコト
ほとんど同じパートの問題を実際に解いてみてわかったコトです。
- 偏差値と難易度は関係しない。
受験合格者の平均点が異なるのでしょうか? - ただし、出題文の文字数の多さは、かなり差がある。
時間的に読み切れるか?が攻略の鍵になりそう。
十分な分析はできていませんが、全く同じパートなのにこんなに問題が異なるとは…!オドロキです。
出題校の紹介
2019年 栄光学園中学校 (今回ご紹介)
2019年 海城中学校 (今回ご紹介)
2019年 成城中学校 (今回ご紹介)
2019年 同志社女子中学校
2019年 白陵中学校
2019年 早稲田大学系属早稲田実業学校中等部(今回ご紹介)
2020年 青山学院横浜英和中学校
2020年 浦和実業学園中学校
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