『羊と鋼の森』を出題した学校(自修館、森村学園)の作成意図とは?

国語・作品/暗記

今回ご紹介するのは、宮下 奈都 著の『羊と鋼の森(文春文庫)』。
個人的には、涙腺崩壊の感動するお話でした。

どの辺りが?…等、詳しくレビューしたいのですが、ここでは中学受験問題をレビューするカテゴリ。

ドコの学校からどんな問題がでたのか?涙を飲んでご紹介します。

物語の概要

作品紹介

高校生の時、偶然ピアノ調律師の板鳥と出会って以来、調律の世界に魅せられた外村。ピアノを愛する姉妹や先輩、恩師との交流を通じて、成長していく青年の姿を、温かく静謐な筆致で綴った感動作。

上述は、紹介文の引用です。


羊と鋼の森 (文春文庫)

この小説は映画化されたので、鑑賞された方もいらっしゃると思います。


羊と鋼の森

あらすじ

話のあらすじをまとめてみました。

  1. 主人公の『僕』がカリスマ調律師『板鳥』と出会う。衝撃を受けた『僕』は、調律師を目指す。
  2. 調律師の専門学校を卒業した『僕』は、『板鳥』のいる『江藤楽器』に就職。先輩『柳』の見習い調律師となる。初めての訪問は『ふたご』の女子高校生が弾くピアノ。
  3. 見習い期間中に様々なご家庭を訪問する。戸惑いながらも技術を吸収していく。
  4. 『僕』は、見習いを卒業し、単独行動する。様々なご家庭のピアノの調律に一人で訪問し、失敗しながらも成長していく。
  5. 『ふたご』に変化点が発生。『ふたご』はピアノを一時中断する。
  6. しばらくして、『ふたご』から『江藤楽器』に連絡がある。『僕』と『柳』が『ふたご』のお宅に向かう。『ふたご』の姉、『和音』がピアニストになると宣言する。
  7. 『柳』の結婚式に『和音』がピアニストとしてピアノを弾くコトに。
    そのピアノを『僕』が調律する。

もっと簡単に言うと、
『外村が板鳥の影響で調律師を目指し、ふたごとの出会いを経て調律師として成長していく話』です。

これが話の”幹”で、付加される話は、”枝葉”となります。

自修館中等教育学校 (2019年)から出題

上述の3.のパート(文庫本:P67−P75)から出題されました。

登場人物

『僕』、『柳』、『依頼主』の3人のみです。読みやすいパートです。

読み取りポイント

読み取りポイントは、大きく下記2点あります。

  • 『ピアノを「元の状態」に戻してほしい』という『依頼主』に対し、先輩『柳』が取った行動と理由。
  • ピアノの調律過程で、『柳』が取った行動に対し、見習いの『僕』が推察した内容。

この2点が正しく読み取れれば、ほぼ問題なく解けるでしょう。

知っておきたい語句・表現

『□を細める』…□に当てはまる体の部位を問う問題です。

⇨『目を細める』ですね。嬉しそうに微笑むことを意味します。

問題作成者の意図を推測する

問題の文は、あらすじのトコロでも述べたように小説の幹ではなく、枝葉のパートとなります。

具体的には、主人公の『僕』が見習い期間中、先輩の『柳』に指導される期間のエピソードの一つです。

一つの話として取り出すには、よくまとまったパートと言えますね。
すなわち、文章問題として作りやすいのかと思いました。

また、登場人物も『僕』、『柳』、『依頼主』の3人と少ないコトから、行動、心情、考え…等、非常に捉えやすいパートだと言えます。

森村学園中等部 (2019年)から出題

上述の6.のパート(文庫本:P185-P195)から出題されました。

登場人物

『僕』、『柳』、ふたごの姉『和音』と妹『由仁』、ふたごの母『奥さん』。
先述の自修館の問題のパートと比較すると、登場人物が多いです。

読み取りポイント

読み取りポイントは、大きく下記3点あります。

  • 『僕』と『柳』の会話から『僕』の気持ち。
  • 『和音』が決意する気持ち。
  • 『ふたご』がなぜ『僕』を呼んだのか?

この小説の幹の部分で、重要かつ大きな変化点となります。

知っておきたい語句・表現

同じ種類の語を選択する問題。
「もったいない」は、二語に分割できない表現と気づけるかどうか、です。

例えば、選択肢内にある「よくない」は、「よく(よい)」と「ない」に分割できるので、同じ種類にはなりません。正解はイの「あぶない」です。「あぶない」は二語に分割できないですね。

問題作成者の意図を推測する

問題文は、P194で終わって良かったはずです。
(「玉のようで」から始まる文章の手前)

そこで終わりにしても、十分に問題を解けます。

なぜ、出題しないP195のトコロまで問題文として記載したのか?
ここに出題者の意図があるのでは?…と勝手に推測してしまったのです。

最後まで読ませて、時間のロスを誘う…なんて姑息な手段ではないはずです。

私は、二つのコトを推測しました。

  • 『ふたご』が『僕』を呼んだ理由を、『僕』が理解するまで書かれているから?
  • 『和音』の心の成長を強調する表現が描かれているから?

本当の問題作成者の意図はわかりません。
しかし、『この小説の素晴らしさを知ってほしい』という気持ちもあったのではないか?とも思いました。

入試で出題した学校

以下の学校で出題されたようです。ご参考ください。

2017年 鴎友学園女子中学校
2017年 神戸女学院中学部
2017年 淑徳中学校
2019年 自修館中等教育学校(今回ご紹介)
2019年 森村学園中等部  (今回ご紹介)
2017年 六甲学院中学校

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました