今回ご紹介するのは、是枝 裕和 著の『万引き家族(宝島社文庫)』。
第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にてパルムドール賞を受賞した『万引き家族』を 是枝裕和監督自ら小説化したものです。
そんな話題作を中学受験国語で出題した、高輪中学校の入試問題をご紹介します。
私の感想
私は映画で観ました。良くも悪くも衝撃的な作品だったと記憶しています。
具体的にどの辺りが?と聞かれたら、返答に困っちゃいますが…

松岡茉優が演じるあの役の?あのシーンやろ?
それとも、中年夫婦の素麺食べながらのあのシーンか?
我が心の代読者、paddle師匠!
他にもデリケートな問題(ネグレクト虐待、窃盗、死体遺棄、風俗…等のアンダーグラウンドな世界)が盛り沢山です。
トータル的に考えると、
小学生の子供に見せるのには反対!というご家庭が大多数と思います。
※ちなみに、ウチの家庭も反対派です。妻と二人でアマゾンプライムビデオで視聴しました。
映画であれ、本であれ、作品を見たコトがある人は、『え?こんなの中学受験に出題するの?』とビックリするかもしれません。
しかし、切り取ったある一部分に絞ると、問題文として成立してしまう。それが、中学受験国語の恐ろしいトコロです。
物語の概要
登場人物の紹介
家族の登場人物は、下記の6人です。
- 治…中年。本作の主人公である東京の下町に暮らす日雇い労働者。
- 初枝…老女。治の母。年金受給者であり、夫とはすでに離婚している。
- 信代…中年。治の妻。クリーニング店工場のパート従業員。
- 亜紀…20代女性。
- 祥太…10歳程度の少年。小学校には通っていない。治と組んで万引きをしている。
- りん…5歳程度の少女。治が柴田家に連れて帰ってきた。実の両親から児童虐待を受けていた。
初枝の持ち家である都内の古い一軒家に共同生活しているものの、いずれも血縁関係がないのです。
また、初枝以外の名は本名ではない、という特殊な家族です。
作品紹介
- 周りをビルで囲まれた、都内の壊れそうな初枝の平屋に、治と信代の夫婦、祥太、亜紀の4人が転がり込んで暮らしていた。
- 彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。
- 社会の底辺を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。
- 冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子(りん)を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。
- しかし、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく…。
上述が、あらすじです。そして、青色アンダーライン部が出題されたパートです。
高輪中学校(2019年)から出題
高輪中学校から受験生へのメッセージを想像してみた
私が思うに、小学6年生にこの問題を出題した学校側は、小学生に向けて次のメッセージを込めたかったのではないか?と感じました。
世の中には、虐待を受けている子供が実在するんだ。生まれ育つ環境自体は変えられない。だから、望んだワケじゃないのに、虐待をする親の元に生まれてしまった子もいるんだ。
君たちは親に大事にされて習い事、学習塾に通わせてもらって、今までやってきたんだ。それはそれで、大変な毎日だったと思う。
そして、今日この学校に受験しに来てくれてありがとう。
これからの人生も今までずっと大変なコト、傷つくコトがあるかもしれない。でもね、君たちは、とても良い環境で生まれ育ったんだ。
そのコトを忘れないで欲しいんだ。
…私のただの深読みでしょうか?
受験問題とは、『学校と生徒とが対話する機会』でもあるワケです。もし、高輪中学が上記のメッセージを受験生に送っているならば、なかなか粋な学校だと思いませんか?
問題の紹介
選択問題が多い
全12問で構成されています。そのうち、選択問題が7問。多いですね。
選択問題は、定番の4択です。
子供達が必ずテストで埋めて帰ってくるものの、決して正答率が高いとは言い切れない『選択問題』。
選択問題には、解き方の極意というか、テクニカルな解法があります。
国語以外の他の科目でも通用するテクニックです。
またの機会に、別途ご紹介させて頂きたいと思います。
知っておきたい語句・表現
『このあたりの初枝の□□感の欠如は、治とそっくりだ。』
…□□の部分に当てはまる熟語を問う問題。ちなみに、文章中から言葉を拾うのではなく、自分で考えて答える様です。
→実際の本に載っていたのは、”罪悪”でした。私は、”倫理”とか、”背徳”とかかなぁ?…と、考えました。
平然と試着室に服を持ち込み、そのまま着込んで持って帰ろうとしている場面です。
”罪悪”に相当する熟語であれば、正解だと思います。たぶん。
もちろん、記述問題も
記述式問題が2問出題されています。
『30字以内で答えなさい』、『50文字以内で答えなさい』
いずれも、状況や内容をまとめて説明する問題です。
下記の訓練が普段からできていれば、内容的にはそれほど難しくないです。
- 文章を正しく読み取れているか?
- 普段からの記述問題の対応ができているか?
2019年に出題された学校は1校だけ
2018年に映画化、2019年4月に本が出版されました。そして、その年度に高輪中学校で出題されたのです。
今後も別の学校で出題されるかもしれませんね。
2019年 高輪中学校
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